中国を語る |
HOME|ブログ本館|東京を描く|漢詩と中国文化|陶淵明|日本文化|ロシア情勢||プロフィール|BSS |
杭州西湖花港観魚:呉越紀行その十五 |
十一月十四日(月)晴。七時半に起床して朝餉には粥を食ふ。昨日まではパンを食ひゐたるなり。主食を粥にすれば副食もまたおのづと変はるなり。 まづ西湖南西の景勝地花港観魚に至り、そこより蘇堤を望む。蘇堤は蘇軾が杭州通判時代に西湖を浚渫した泥を以て築いたものにて全長2.8キロメートルといふ。それまでの西湖の深度は1.5メートルなりしがこの工事を以て二メートルばかりに深くなりし由。 入り口近くには蘇軾の石像立てられてあり。髭を蓄へたる風貌はなかなか眼光鋭きものあり。余この石像を眺めつつ、蘇軾がこの地にて詠みたる詩を暗唱せり。(贈劉景文なり) 荷尽已無フ雨蓋 荷は尽きて已に雨をフ(ささ)ぐる蓋無く 菊残猶有傲霜枝 菊は残(そこな)はれて 猶ほ霜に驕る枝あり 一年好景君須記 一年の好景 君須らく記すべし 正是橙黄橘緑時 正に是 橙は黄に橘は緑なる時 まさに今頃の季節を詠みしなるべし。 西湖には多くの遊覧船往来して人々を楽しましむ。中にはかくの如き舟形の行楽施設もあり。 湖畔には夥しき人々思ひ思ひに散策を楽しむ。柳の葉が水上に影を垂れ幽玄なる趣をかもしてあり。 また池には緋鯉泳ぎてあり。この池には合はせて七千匹もの緋鯉を飼ひおく由なり。 付近の露店にてボンタンを商ひてあり。赤ん坊の頭ほどの大きさなり。夫人らこれを求むるに、男ども自分らにも分けてくれたしといふ、夫人ら答へていふ、ダメ、ひとりで全部食べるんだから、と。 西塘の手前にて高速道路より降りんとするに、我々の並びたる車線全く動かずなりぬ、鉄屑を満載したるトラック邪魔しをるなり。運転手が偵察に赴くに、トラックは重量超過なるに罰金を払はんとせず、さればもぎりのスタッフもトラックを通さずといふなり。仕方なくバックして車線を変更し、通過することを得たり。 西塘の入り口付近に停車してまづトイレに入る。中国のトイレは写真の如き体裁のもの多し。最近は何処の観光地にても衛生的になりしといへど、中には依然昔のままのものもあり。それらは扉を低くして外部から中が丸見えなれば、日本人の女性などは拒絶反応を起こすなり 静怡軒酒店にて昼餉をなす。西塘地ビールなるものを頼むに、これもまた酒精度三度未満にて水を飲むが如し。鶏の手羽、牛肉とピーマン、鳥の胸肉と青菜のスープ、アヒルと青トウガラシ、ガチョウの頸、白菜、セロリ、糸ジャガイモ、にんにくの芽、麻婆豆腐、水餃子などを供せらる。 |
前へ|HOME|中国旅行|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |