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西湖之夜:呉越紀行その十四 |
杭州の夜の催しの最たるものは越劇と雑技といふ。余らは康康に勧められ雑技を見ることとす。雑技といひても上海雑技の如くアクロバット演技一点張りにてはあらず、物語形式をとりて歌舞を交ゆ、されば身体演技式歌舞演劇ともいふべし。 劇場は東坡別院といひて西湖東岸の一角にあり。普通の劇場とは異なりて、座席に並べて卓子を据え、それにて茶の給仕をなすなり。ただし飲食は供せざるやうなり。 余かつて台北に旅せし折、巨大な餐場にてテーブルを囲み食事をなしつつ台湾雑技を見たことなど思ひ出しぬ。 劇は五幕からなれり。岳王即ち南宋の英雄岳飛の活躍に始まり、杭州の繁栄と恋の物語を交え、歌舞ありアクロバットありの賑やかなる演劇なり。 圧巻は千手観音の舞にて、一列に並べる少女ら交互に手をゆらめかして、あたかも千の手を操るがごとき演出をなす。なかなか面白かりき。 なほ、S氏夫妻の話には、この劇団はかつて日本にも公演したる由。その折千手観音の舞をなせし少女らは皆耳が聞こえぬなりと紹介ありし由なり。 午後九時過、昨夜と同じホテルに投ず。聊か疲れを覚えたれば、シャワーを浴びて直ちにベッドにもぐり入りたり。 |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |