中国を語る
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中国人の姓氏は多様化するか

中国人の人口は13億人を数える。地球上に生きる人間の数は65億人であるから、実に5人に一人は中国人ということになる。

その中国人の姓氏はバラエティの幅が狭いから、同姓の人が桁外れに多い。中国で最も多い姓は「王」氏であるが、その数実に9300万人、ついで多い「李」氏は9200万人、張氏は8800万人を数える。一つの姓だけでヨーロッパの大国よりも人口の多い国がいくつも出来るほどだ。

同姓が多ければ同姓同名が多いのも必然だ。現代中国で最もポピュラーな姓名は「王陶」さんだそうで、10万人以上はいるだろうといわれる。

中国に同姓が多いのは姓氏を漢字一文字で表す伝統による。漢字の数は限られているから、勢い姓の数も限られたものになる。司馬氏や欧陽氏のように二文字で表す姓もあるが、その数は非常に少ない。日本のように3文字、4文字といった姓は殆ど存在しないも同然のようだ。

中国人の間には百家姓という言葉遊びがあって、頻度の多い姓を語呂良く並べて唱えるらしいのだが、今日の百家姓に含まれる100の姓を合わせると、中国人の85パーセントをカバーするそうだ。

中国科学院の調査によれば、実際に存在する姓の数は4000余りにのぼるらしい。歴史上では2万数千の姓がかつて存在したが、その殆どは淘汰されて消滅してしまったという。姓が少数の字に収斂してきたのには、なにか文化的な背景があるのかもしれない。

市場の開放化や国際化を迎えた今日、同姓や同姓同名の人が余りにも多いのは様々な面で混乱のもとになる。そこで中国政府は姓氏の多様化を図る政策を打ち出した。

中国人は夫婦別姓であるが、生まれてきた子どもは、これまで父母どちらかの姓を与えられてきた。たとえば周という男性と、朱という女性の間の子どもは、周あるいは朱のいづれかを自分の性としてきた。それを、父母両方の姓の字を組み合わせてもよいとしたのである。これだと、子どもにとっては、周、朱、周朱、朱周という4通りの組み合わせの中から自分の姓が選ばれることとなる。

この政策が実施されれば、短期的には、父母双方と姓の異なる子どもが生じることとなるが、長期的に見れば中国の文化変容をもたらすほど大きなインパクトをもたらすに違いない。なにしろ名前の付け方というのは、文化の基本をなすものだからである。

ところで、司馬氏と欧陽氏が結婚したらどうなるのだろうか。司馬欧陽あるいは欧陽司馬という組み合わせも許されるのだろうか。

この分で将来のことを予測すると、司馬欧陽氏と諸葛公孫氏が結婚した場合のことも考えておかねばならないだろう。





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