中国を語る
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私設拘留所が大繁盛:中国の請願者排除対策


中国の国会に当たる全人代が開催中だが、こうした大規模イベントが開かれると、中国全土から請願者たちが集まってくる。彼らは、地方政府による不当な行為を直接中央の実力者に訴えようとして集まってくるのだ。しかし彼らには多くの場合、過酷な運命が待っている。その始まりが、拘留所への収容だ。

北京には請願者を専門的に拘留するための施設が存在する。馬家楼(Majialou)とか久敬庄(Jiujingzhuang)の救済中心と呼ばれるものだ。"救済"をうたっているが、本当の目的は請願者を収容することだ。中国では請願は正当な権利であるにかかわらず、秩序維持とか公安とかの理由をつけて、請願者を街頭から排除し、一時施設に拘留した後、請願者の出身地方当局に引き渡されることが公然と行われている。地方当局に引き渡された請願者がどんな目に合うかは、今朝(3月6日)の朝日が報道していたとおりである。

馬家楼や久敬庄の救済中心はおのずから収容能力に限度がある。そこで、膨大な数の請願者が集まる今回のようなケースでは、私設の拘留施設が大繁盛することとあいなる。こうした施設を利用するのは、北京の警察当局ではなく、地方の当局が契約したエージェントだ。このエージェントが路上の請願者を拘束して私設拘留所に連れて行き、それぞれの出身地方当局にひきわたすのである。

地方の実力者にとって、請願者が中央に問題を上げることは、自分たちの出世の妨げになる。そこで、自腹を切ってもエージェントを雇い、請願者の声が中央のお偉いさんたちに届かないように、最大限の努力をするというわけなのである。

こうした私設の拘留所は、短期間身柄を拘束することが目的なので、最低限の設備しか備えていない。多くの被拘留者は、床の上で寝かされ、満足な食事も与えられまま数日を過ごし、やがて出身地方の官憲に引き渡される。引き渡された後にどんな運命が待っているかは、朝日の記事を読んでもらいたい。(写真はEconomist から)

(参考)Treating the symptoms In the name of social order, the government turns a blind eye to "black jails" Economist





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