中国を語る
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全人代は何を代表しているか


中国の国会と言われる全人代(全国人民代表大会)が、約2週間の日程を終えて、習近平以下のあらたな指導部が登場した。この指導部は今後10年間にわたって中国をリードしていくと考えられるので、日本としても長い付き合いになることを覚悟して、今後の対応に努めていかねばなるまい。

ところでこの全人代だが、国会に当たる立法機関の位置づけではあるが、日本や欧米諸国の国会とは似て非なる者である。立法機関とはいっても、共産党執行部が用意した方針に非を唱えたことは今まで一度もなかったし、自分から法案を提出することもなかった。そもそも年に二週間しか開催されないのであるから、そんなことをしている暇などない。こんなところからラバー・スタンプというニックネームを頂戴している。共産党の用意した法案にスタンプをつくのが役目だという意味の皮肉だ。

全人代を構成する代議員の選挙も、日本や欧米とは様相を異にする。選挙民の中から自由意思で立候補したものを対象に、これもまた選挙民の自由な投票行動に基づいて選ばれるというわけではなく、実質的に共産党員の中から選ばれる。共産党の一党独裁と言われる所以だ。

すなわち、代議員は各級の行政機関や軍の代表と言うことになっているが、それを選ぶのは当該選挙区の指導メンバーだ。この指導メンバーと言うのが、県レベル以下を覗いては、自由な選挙によって選ばれた人々ではない。ということは、中国の国会は国民の自由な意思を代表しているとはとてもいえないのが現状なのだ。

その代議員の数は約3000人ということになっている。そのほとんどは各級行政機関の指導者や軍の指導者ということになるが、最近はどういうわけか、金持のエリートの数が増えていると、最近号のエコノミストのレポートにあった。それによれば、今年の代議員のうち90人は、中国の大富豪1000人の中に含まれているという。これは、本来労働者と農民の党とされる共産党の組織の中に、ブルジョワジーの影が大きく差しこめてきているということを物語っている。

各級の行政機関も、最近は副業の方に忙しいと言われている。弱い者から二束三文で土地を取り上げ、それを高い価格で売り抜くことによって莫大な利ザヤを稼ぐ。そんなことが全国規模でおこっている。習近平政権最大の課題は、まずそうした腐敗を除去して、共産党に対する民衆の怒りを緩和することだとさえ言われているほどだ。

こんな訳で、最近の中国共産党独裁政権は、農民や労働者の利益のみならず、金持や特権官僚の利益を考慮にいれるようになってきているようだ。(写真はAFPから)

(参考)Don't flaunt it Rubber-stamp billionaires Economist





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