中国を語る
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中国各地で発生した反日デモ


筆者が9月11日から5日間の中国旅行を終えて日本に帰ってきたのは9月15日の土曜日のこと。すると早速目に飛び込んできたのが、中国各地で反日デモが吹き荒れているというニュースだった。帰国当日の15日には、筆者らが旅行した香港や深?を含め数十都市で反日デモが発生。北京では日本大使館を大勢のデモ隊が囲み、上海では日本人が危害をうけたという話もあった。

デモは翌日の16日にはさらに拡大し、広州の日本領事館が入っているビルには大勢のデモ隊が押し寄せて什器類を破壊するなどの狼藉を働いた。9月18日は満州事変の発端となった柳条湖事件の記念日であり、現在では国辱記念日の位置づけをされている日とあって、反日デモが更に拡大する恐れも指摘されている。

中国でこのように大規模な反日デモが起きるのは2005年以来のことだ。2005年の時には当時の小泉首相の靖国参拝をめぐって歴史認識問題に火が付いたのがきっかけだった。今度は、日本政府による尖閣諸島国有化問題がきっかけだ。

尖閣諸島問題は、これまで持ち主だった人が、個人的な動機から島の売却に意向を示したことがそもそもの発端だった。その話に自称愛国主義者石原東京都知事が飛びつき、わざわざアメリカまで出かけて行って、都が尖閣諸島を買収するのだと派手なパフォーマンスを見せた。野田政権は当初それを静観していたが、石原氏が島を入手してはどんな不測の事態が起こらぬとも限らぬと判断し、国自ら取得に動き出した。野田政権としては、そのほうが静穏無事な実効支配と言う点で好ましいと思ったのだろう。

しかしその目論見は外れた。中国政府は日本側の対応を声高に非難し、民衆による反日運動も黙認する態度に出た。それが中国全土での大規模な反日デモの発生をもたらしたのだと推測される。

一地方自治体首長の大向う受け目的のパフォーマンスなら、そんなに大きな事態には発展しなかったかもしれない。それを野田政権は自分から大きな事態に発展させたわけだ。そういわれてもしようのないところがある。

孰れにせよ、これまでの中国側の反応は常軌を逸している。反日デモを黙認するばかりか、巡視船の部隊を尖閣周辺の日本側海域に出動させるなど、軍事衝突さえ辞さないといった姿勢を見せている。それに対して野田政権は断固とした態度を取ると明言している。まさに売り言葉に買い言葉、このままでは本当に武力衝突が発生するかもしれない。

なぜ、こんな事態になってしまったのか。野田政権は冷静に考える必要がある。何故なら、そもそも尖閣諸島はいまでも日本が実効支配しており、こちら側から積極的に行動をしかける必要性は薄いからだ。かりに野田政権が実効支配を強めるという方針を持ったのだとしても、外交努力なしに力づくでということにはならない。

ところが今回の野田政権の対応を見ていると、将来の日中関係を見据えた冷静な判断だったとはとても言えない。石原氏の意向に振り回される形で国有化を選択したことはともかく、その方針の正当性を中国側に認識させる努力は一切しなかった。その必要がないというのが野田政権の立場だとしたら、外交などと言うものは不要ということになる。

ともかく野田政権の対応は、外交無策のままに騒ぎだけ拡大させたという風に映る。(写真は北京の日本大使館に押し寄せた反日デモ隊)





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