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帰国:嶺南紀行その八

九月十五日(土)晴。早朝六時に起床す。ホテル内の食堂にて朝餉をなし、八時半にバスにて出発、三十分ほどして香港国際空港に到着す。帰国便は午前十一時三十分発成田空港行HX六百十八便なり。

フライトを待つ間出発ロビーに小憩す。飛行機は予定時刻どほりに離陸せり。機体はやはり小型機なれど、往路の機体に比してこちらは新しく、設備も損傷なし。機内往路同様ほぼ満席なり。

十二時過食事を供せらる。ビールはやはり一本のみなり。食事を済ませて後は、雑誌を読んで時間をつぶす。

日本時間午後四時四〇分(香港時間午後三時三〇分)、予定時刻どほり成田空港に着陸す。今子は余と同じく東武野田線沿線に居住しをるなれば、帰路塚田まで同道す。

帰宅後荊婦に土産物を示すに、欣然として喜びぬ。余自分のために買ひ求めし健康枕を示し、価壱萬円なりと報告するに、荊婦侮蔑の表情を浮かべつついはく、そんなもの西川産業のラテックス枕と同じでしょ、西川の枕なら壱萬円もしないわよと。

余応へていはく、旅の思ひ出は金にかへられず。土産物の値段を云々するは無粋なりと。

荊婦またいはく。苦し紛れの強がりみたいね、でもそれでいいんじゃない、十分に楽しんだ上に旅の思い出を形で残せるんだから、と。

とまれ様々なる意味で有意義なる旅なりき。





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