中国を語る
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温家宝家族の蓄財スキャンダル


温家宝中国首相の家族が、莫大な金額にのぼる蓄財をしていたとする記事を、米紙ニューヨーク・タイムズが乗せたところ、中国側ではこれをアメリカの陰謀だとするコメントを出したうえで、当該の記事にアクセスできないようにしたというので、多少の関心を覚えた筆者は、早速ニューヨーク・タイムズのウェブサイトをひらき、当該の記事を読んだ次第だ。

その記事の表題は、Billions in Hidden Riches for Family of Chinese Leader By David Barboza。記者は、ウィキリークスが漏らした中国政府資料などをもとに、独自に取材した結果だと断ったうえで、温家宝首相の家族による蓄財が、27億ドルに上ると書いている。これは、温家宝の母親や兄弟、そして義理の親族名義の蓄財であり、そのほかに、温家宝の妻と息子による膨大な額の蓄財が別途あるのだという。

その妻と息子と言うのが、一癖もふた癖もある、というような書き方を記事はしている。妻の張蓓莉(Zhang Beili)は、宝石業界の女王と呼ばれるような存在で、恐らくは夫の力を背景に宝石の流通にかかわる利権を手にし、膨大な富を築いたということになっており、息子の温雲松(Wen Yunsong ウィンストン・ウェンという英語名をも使っている)は投資会社を立ち上げ、やはり父親の権威を背景にして巨額の利益を享受していたということだ。

中国では、権力者が権力を背景に利権をむさぼるのはごく普通のことであり、温家宝の家族が温家宝の力を背景にして蓄財に励むのは、そんなに奇異なことではない。しかし、温家宝自身は、自分は貧しい家庭に育ち、つつましい生活に馴れているので、贅沢をしたいとは思わないし、金が欲しいとも思わないとも、かねがね言って来ただけに、家族がこんなに巨額な金を溜めこんでいたとは、あまり格好のつくことではない。

そこで、温家宝は果して妻や息子の巨額蓄財を知っていたのかということが問題になったこともあるようだ。というのも、温家宝は共産党幹部の不正蓄財をあばくことに最も熱心だというポーズをとってきており、不正蓄財追及の範囲には家族によるものも含めて来たからだ。そこで、他人の不正追及に熱心だった温家宝が、自分の家族の蓄財については、十分な認識をもっていたのか、改めてそれが問われたわけである。

ともあれ記事は、かなり長いもので、かなり詳細に温家宝の家族の金の流れを追っている。読み物としても面白かった。

ところで、温家宝は今年限りで首相の座を降りることになっているが、その後も引き続き政治的な影響力は保ちたいとの意欲を示していた。今回の件が、温家宝の政治的な立場にどれほどの影響を及ぼすかについては、今後の展開にかかっていると言えよう。(写真は温家宝:ロイターから)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2012
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