中国を語る
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とまらないチベット人の焼身自殺


3年前から活発化したチベット人僧侶の焼身自殺がなかなかとまらない。昨年は26人のチベット人が焼身自殺した。その大部分は僧侶だったとはいえ、なかには女性や一般人もいたという。チベット仏教においては、自殺を含めて生命を軽視することは許されない行いとされているが、その自殺がチベット仏教を守るためなら許されるとの見解も流布している。釈迦が、飢えて自分の子どもを食おうとしている母親の虎に、自分の身を差し出したという言い伝えがそのよりどころとなっているようだ。

2008年の3月に発生した反中国暴動をきっかけに、中国共産党によるチベット族への圧力が強まった。このときの暴動は、1959年のダライ・ラマのインド亡命事件に抗議する形で始まったものだ。ダライ・ラマ自身は、中国からの独立を求めているわけではなく、チベットの自治が保障されれば中国の一部として生き続けることに異存はないといっているが、中国共産党はそれを真に受けず、また中国国内のチベット族はダライ・ラマの帰国を求めて、中国共産党と対立する姿勢を取り続けている。

チベット族が最も問題としているのは、漢民族がチベットに洪水のように押し寄せ、そのためにチベット固有の文化が浸食されつつあるといった恐怖感だ。ダライ・ラマもその恐怖感には理解を示し、チベット固有の文化と漢民族との共存が図れるようなシステムを確立したいといっている。

ダライ・ラマは、自分は113歳までに生きるつもりだが、その間に共産党はなくなるだろうから、チベットの未来をあまり悲観する必要はないと、人々が絶望に駆られて自殺することがないように呼びかけている。

しかし、ダライ・ラマよりも共産党の方が長い寿命を享受するだろうとの見方をする人もいて、そういった人々は、チベット文化を守るためには、いまこそ立ち上がらねばならないと訴えている。

中国共産党の方は、これまでに反中国的な人々を弾圧する一方で、チベット人に特別な教育機会を提供したりと、飴と鞭を使い分ける政策をとってきた。しかしそうした政策ではなかなかチベット人の中国文化への同化が図れず、かえって彼らの民族意識を刺激して、反中国感情を高める結果なっているのではないか、と反省する動きも出てきているようだ。(写真はダライ・ラマ)





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