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薄熙来(Bo Xilai)の失脚:中国の権力闘争


重慶市のトップ(書記)でかつ中国共産党中央委員を務め、習近平とともに中国の次の世代の最高指導者候補としてみられていた薄熙来(Bo Xilai) が事実上失脚した。重慶市トップの役職を解かれたのだ。中央委員の役職はそのままだが、これも近いうちにはく奪されるだろうと推測されている。

直接のきっかけは王立軍(Wang Lijun)の亡命事件だ。重慶市の副市長兼公安局長として、薄熙来の意を帯びて打黒運動の先頭に立ってきた王立軍が突然成都のアメリカ総領事館に亡命を求めた。これが大騒ぎになって、世界中の耳目を集めたおかげで、メンツを重んじる中国の最高権力者たちが、王立軍のボスで重慶のトップである薄熙来にけじめをつけさせたというのが、表向きの解説だ。

しかしそれ以上に、薄熙来の政治手法を巡って、最近批判が高まってきたことも背景にある。薄熙来は中国マフィアの撲滅と称して膨大な数(2000人ともいう)の犯罪者を摘発したが、その中には自分の政敵も多く含まれていたというのが大方の見方だ。薄熙来は王立軍を通して自分の気に入らぬ人間どもを逮捕させては、ろくな審判も行わずに処刑したというのだ。

薄熙来はまた、青年組織を作って、彼らに革命歌を歌わせたり、毛沢東語録をローディングした携帯電話を持たせるなど、エクセントリックな行動が目立っていた。それを見た人々の中には、文化大革命の悪夢を思い出す者も少なからずいたという。

こうしたことが背景になって、共産党内部で薄熙来への批判が高まったということだろう。温家宝(Wen Jiabao)は先日全人代終了後のインタビューで重慶市のことを取り上げ、文化大革命のような混乱の再発に深い憂慮を示した。

ここには明らかに路線を巡る対立がある、とするのが事情通の見方のようだ。習近平(Xi Jinping)や薄熙来は太子党とよばれる党派を代表しているが、彼等は保守的で、中国の近代化よりも共産党の政治的利害を守る方に熱心だといわれる。

一方、胡錦濤や温家宝は改革開放を推し進めようとする考えをもっているとされる。

こうした政治路線をめぐる対立とならんで、権力をめぐる党派間の争いが絡む。そこが中国の政治の複雑なところだ。(写真は薄熙来:Bloomberg から)





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