中国を語る
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諜報国家中国のスパイ戦略

ニューズウィーク日本版の最近号が中国のスパイ戦略を分析したアレックス・ニューマン氏の記事「世界の機密を貪る中国スパイ」を載せた。題名もショッキングだが、中国が巨大な諜報国家になりつつある事実もショッキングだ。日本を含めて先進国が油断していると、最先端の情報を中国に盗まれるばかりか、その情報を生かして深刻なサイバー攻撃を受けないとも限らない、記事はこう警告している。

筆者などは、スパイと云えばプーチンのロシアがまず頭に浮かび、中国がスパイ先進国だとはまったく気が付かなかったが、先日三菱重工が蒙った深刻なサイバー攻撃も、中国が絡んでいるといわれれば、なるほどと思わざるを得ない。アメリカは日本以上に深刻な被害を、政府部門、民間研究部門を通じて受けているという。

中国がスパイ活動に熱心な理由の最大なものは、世界の先端技術をただで、あるいは安く手に入れることができるからだ。かつては中国のスパイ活動は反体制運動の弾圧を最大の目的にしていたが、今日では情報を盗むということに比重がおかれるようになった。

つまり中国にとってスパイとは、世界中から貴重な情報を盗み取るための手っ取り早い手段なのだ。そのことを共産党政府も十分理解し、最近はスパイ養成を目的とした高等教育機関の創設にも力を入れるようになった。

スパイ活動の担い手の大部分はもちろん人間だ。これぞとさだめた標的にスパイを送り込んで、貴重な情報を盗ませる。これが基本パターンだ。これにサイバー攻撃を利用した情報収集が加わり、最近は人工衛星を用いた情報収集も盛んになっている。

アメリカ政府は、核兵器に関する最先端情報など最重要機密の多くが中国によって盗まれたと認めている。中国はあらゆる手段を使ってこうした情報へのアクセスを持っている人物に近づき、彼らを通じて貴重な情報を盗み出しているのだ。AP通信が実施した司法省の記録文書の分析によれば、連邦裁判所では2008年以降少なくとも58人が中国関連のスパイ罪に問われ、その大部分が有罪判決を受けている。

スパイ活動は、人権活動家など反体制分子の弾圧のためにも利用されている。最大の標的は、海外に拠点を置く反体制運動、たとえば法輪功やウィグル人団体などである。

グーグルは昨年中国国内から極めて高度なサイバー攻撃を受けたが、狙いは中国人人権活動家のメールアドレスだったという。

あらゆる手段で集めた情報を、中国はさまざまな目的に利用している。もっとも警戒すべきは、他国に対する攻撃にこの情報が用いられることだ。日本も安閑はしていられない。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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