中国を語る
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中国高速鉄道は世界一危険な鉄道システム

中国の脱線事故の現場を撮影したYouTubeの画像を見ていたら、脱線して高架橋からぶら下がった車体を乱暴にひっぱたいて落下させているところが写っていて、筆者はびっくりしたものだ。事故車両なのだから大事に保存して原因を究明するのが基本だろうに、逆のことをしていると思えたからだ。そうこうするうち、今度はもっとびっくりすることが起こった。脱線した車両の一部を解体して、それを掘った穴のなかに埋めてしまったというのだ。

ネット上には当然避難の声が巻き起こった。もしかしたら内部に生存者がいたかも知れぬのに、ろくに確かめないままに埋めてしまうのはとんでもないといった意見から、事故の原因が知られるのを恐れて隠蔽したのではないかなど、鉄道当局者を糾弾するものがほとんどだった。

誰の命令でこんなことが行われたのか。中国政府はこの事故から教訓を引き出そうとするなら、こんなふざけた対応の責任者を処罰すると同時に、事故原因の解明から再発防止策まで真剣に取り組まねばならない。そう考えていた矢先、日本版ニューズウィークの電子版に載っていた冷泉彰彦氏の文章が目に留まった。(中国高速鉄道事故、4つの問題点とは?)

この事故の背景にあるものについて踏み込んだ分析をしたもので、大変参考になる。ここで要旨を紹介しておきたい。

氏は中国鉄道システムの問題点を4点あげている。まず第一に、「鉄道運行の大原則である「先行の列車のいる区間には、後続列車は進入してはならない」という原則が守られていないということです。難しいことではありません。「赤信号を守れ」ということです。」といっている。赤信号がともっているときは、後続列車はどんな事情があっても進んではならない、この大原則が守られていないという指摘だ。

第二に、もし何らかの事情で信号が機能していないときには、そもそも前へ進んではならない、その場合にはすべての列車は停止して信号システムの復旧を待たねばならない、このもうひとつの大原則が今回は守られなかったと指摘している。

第三として、今回のように落雷によって信号システムがダウンする事態は当然予測されたことであり、それに対する予防策が講じられねばならなかったのに、その形跡がない。

第四として、事故原因の究明体制がまったくなっていない。氏は中国側が脱線車両を埋めるような措置をとったのは、偶発的なことではなく、あらかじめ決定されていた方針だったのではないかと見て、もしそうなら、中国側には高速鉄道の安全性に対して全く理解がなかったといっている。

こう指摘した上で、氏は当面中国鉄道には乗らないようにすすめている。どうしても乗らざるを得ない場合には。先頭から4両目までと、最後尾の車両は避けるようにとすすめている。今回脱線転落したのはこうした車両だったからだ。

氏はまた日本側にも、この事故に対して最大限の協力を申し出、高速鉄道に対する世界中の不信に答えるよう努力すべきだと述べている。

とにかく今の状態を放置していては、中国の高速鉄道は世界一危険な鉄道システムであり続けるだろう。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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