中国を語る
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中国青海省の大地震 Qinghai Earthquake


中国青海省南部で4月14日の朝発生した大地震は、またもや甚大な被害を引き起こした。これまで確認されている限りで、死者は1700人以上、負傷者は20000人近くにのぼる。また家屋の倒壊など物的被害は21万件に達するという。

被害がもっとも大きかったのは震源地に近い同省チベット族自治州玉樹県、いまだ瓦礫の下で救助を待っている人が数多くいるとみられる。こうした事態に対して、中国政府当局は外国からの援助申し出を断り、軍の部隊や武装警察官6千数百人と2000人の消防隊を投入、生き埋めになった人たちの救出に当たらせているが、場所はなにせ3500メートルの高山地帯、現地に入った救助員自身が高山病で倒れるなど、活動ははかばかしく進んでいないようだ。

生き埋めになった人たちが生還できる目安は72時間といわれている。すでにその目安の時間が過ぎた。犠牲者の数がこれからどれくらいに膨れ上がるか、予断を許さぬものがある。

中国はおととし2008年の5月に四川大地震を経験したばかりだ。そのときの地震のエネルギーはマグニチュード8.0と、まれに見る超ド級の規模で、死者8万数千、負傷者37万という甚大な被害をもたらした。今回の地震はマグニチュード7.1、しかも比較的人工密度の低い地域だったこともあって、被害の規模は四川大地震ほどではない。

しかしチベット族が多く暮らしている地域が地震の被害にあったというので、政治的な反響が憂慮されている。チベット族の自治問題はいまや中国政府の喉もとに刺さった棘のようなものだ。対応を間違えるととんでもない事態になる恐れがある。そんなことから外遊中の胡錦濤主席も神経を尖らせていた。

一方インドに亡命中のチベット族の指導者ダライ・ラマ14世はこの地域の出身ということもあって、熱いメッセージを発している。できれば直接現地に赴いて、被災者を激励したいともいっているが、政治的に対立する中国政府がそれを認める様子はない。

中国にとって今年は上海万博を控えて、国威を世界に向かって示すべきときだ。そんな大事なときにチベット族の問題がつまずきの石になるようなことは極力避けねばならない。そんな思惑が伝わってくる。

なお上の写真(AFP提供)は、被災した現地玉樹県で、生き埋めになった人々の救出に励むよう、部隊を陣頭指揮する胡錦濤の姿を写したものだ。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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