中国を語る
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アジアの軍拡競争


ストックホルム国際平和研究所Stockholm International Peace Research Instituteによれば、アジアは今日の世界の中で最も活発に軍備拡大が行われている地域だそうだ。2005年から2009年までの5年間で、軍事予算の総額は倍増し、その勢いは2010年から2011年にかけても止まらない見通しだ。欧米やロシアの死の商人たちにとって、最大のお得意先というわけだ。

アジアの軍拡競争をリードしているのは中国だ。中国の軍事予算はこの数年間毎年10パーセント以上の伸びを記録してきた。その結果中国は世界有数の軍事大国になりつつある。

中国はもともと、対外的な進出を目的に軍備に努めたことはなかった。それが急速に軍拡に熱心になった背景には、軍部の政治力が増していることがある。胡錦濤やその後継者と目される習近平は、ケ小平や江沢民に比べて軍部への強力な統制力に欠けているといわれ、これが軍部の台頭を許し、軍事予算の拡大に結びついているといわれる。

中国はその軍事力で、周辺海域の制圧に乗り出し、南シナ海では海賊行為に近いことを行って、近隣諸国を不安がらせている。先日は尖閣諸島をめぐって日本との間で対立を起こした。どちらも軍事力の充実を背景にした、軍部のパフォーマンスだといえなくもない。

こうした中国の大国としての自制を欠いた行動が、アジア諸国を軍備増強に走らせている大きな要因であることは間違いない。

アジア諸国の中でも、北朝鮮とパキスタンは、特異な軍事独裁体勢の国だ。北朝鮮は1800万人の人口のうち100万人が兵士だとされるくらいの、特殊な軍事国家だし、パキスタンも近年インドとの対立を背景に強力な軍事国家をめざしている。

軍事独裁という点では、ミャンマーも同列だろう。先日20年ぶりに総選挙を実施したが、民主化が進むという保証はなく、かえって軍備の増強は進む見込みだ。ロシアからジェット戦闘機を導入したり、北朝鮮の技術援助を得て核兵器を開発しようとする意図さえ持っているといわれる。

こうした国々の異常な軍拡行動を目のあたりにして、アジアの民主的といわれる国々も、相応の軍備増強に走っているというのが、今日の構図のようだ。

マレーシア、インドネシア、フィリピンなどは中国の脅威に備えて、タイはミャンマーの威圧に備えて、そして韓国は北朝鮮指導者たちの狂気に備えて、それぞれ軍備増強に努めているという訳だ。(上の写真は中国人民解放軍:AFP提供)

(参考)Militarized States By Joshua Kurlantzick NEWSWEEK





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