中国を語る
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人民元切り上げはどこまで進むか

             元相場と中国の貿易収支(日本経済新聞)

中国の通貨当局が人民元の対ドルレートの切り上げを事実上容認したことを受けて、週明けの6月21日には早速その効果が現れた。人民銀行がガイドラインとして設定している一日あたり0.5パーセントの上昇幅一杯に、元の対ドルレートが上昇したのだ。今後ともこの傾向が続くのか、またその場合どれくらいの水準にまで元の切り上げが進むのか、見方はさまざまだ。

上のグラフ(日経新聞作成)から見て取れる通り、人民元は長い間ドルに対して固定レート制をとっていた。それが中国の経済成長の起爆剤となったことは、日本のかつての高度成長のメカニズムと共通するところがある。

2005年の7月には約2パーセントの切り上げを実施し、その後もじりじりと対ドルレートが上昇していったが、ここ2年間は、再び為替市場に強力な介入を行い、事実上対ドルレートを固定する政策を実施してきた。そのことが、リーマンショックにかかわらず、中国の経済成長が続いた大きな要因である。

こうした中国の為替政策に対しては、アメリカを始めとした外国からの強い不満が上げられた一方、中国経済そのものの内部矛盾の発生も指摘されるようになった。

アメリカの批判は、中国の為替水準が不当に低い水準に据え置かれるよう操作されているというものである。アメリカの言い分によれば、人民元はドルに対していまだに40パーセントも過小評価されている、その結果中国の輸出産業がアメリカの国内産業を破滅に追いやる一方、中国人の不当に低い賃金水準が世界中にデフレをばら撒いている、といったものだ。

たしかに近年のグローバリゼーションを主導した最大の立役者が中国であることは間違いないだろう。その中国が為替レートを不当に低く操作しているとあっては、デフレの震源地だと非難されてもいたし方のないところがある。

中国の為替操作は他方で、中国経済自身にも悪い影響を及ぼすようになってきた。中国の金融当局は、対ドルレートを事実上固定させるために、ドル買い・元売りを大規模に仕掛けてきたが、その結果膨大な金あまり現象が生じた。その金余りが金融バブルを生み出し、中国経済はかつてないほど加熱している。

加熱振りは中国経済のあらゆるファクターに及んでいるが、とりわけ不動産投機に著しく現れている。このままではバブルがはじけて、かつての日本の二の舞になりかねない。こうした危機感が中国の金融当局にあるのも事実らしい。

こうした内外にわたる事情が中国の金融当局をして、今回の措置を取らせたのだろう。その措置は短期的にはジグザグな進路をたどることはあっても、長期的に見れば、世界経済における中国の座に相応しい水準に収斂していくものと思われる。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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