中国を語る
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中国新指導部の動向


先日の中国共産党大会で新しい指導部に選ばれたメンバーは、来年3月の全人代(中国の国会に当たる)で任命されることによって、正式に国家機関のポストにつけることになっており、したがって現在は待機状態にあるといってよいが、実質的には、すでに新しい指導者として動き出している。その中でも内外から最も注目を浴びているのは李克强(Li Keqiang)だ。

李克强は、来年三月に首相に就任する予定になっており、それまでは温家宝(Wen Jiabao)が引き続き首相のポストに留まっているが、実質的な権限は李克强に移行しつつあり、温家宝はもはやレームダックになったと言われている。温家宝自身も、このまま静かに消えていきたいと公言しているらしいが、それには先日ニューヨークタイムズに暴露された家族の蓄財などに関して、あまり表面に出ない方が利口だとの打算も働いている、と推測されている。

李克强がもっとも強調している言葉は「改革」だ。一にも改革、二にも改革、三にも改革、と李克强はことあるたびに強調している。改革なくして共産党の未来はない、そういって同僚の共産党員たちを叱咤激励しているというわけだ。

李克强が強調している改革の中身とは、第一に、労働生産性の向上、第二に、農村と都市との格差の是正と農民と都市居住者の権利の平等、第三に、政府機関による農地の強制収容を控えること、などである。

習近平(Xi Jinping)が腐敗の根絶に力点を置いているのに対して、経済力の向上に視点を向けているようだ。経済力を向上させ、それで生まれる余力を以て、内陸部や農村地帯の所得を増大させる。そのことで、社会の安定を確保する。それが李克强の戦略のようだ。

一方、新しい指導部がどのような外交戦略を抱いているのかについては、あまり明瞭ではない。これまでは、戴秉國(Dai Bingguo)が胡錦濤の外交の懐刀をつとめてきたが、彼が来年三月に退いた後、誰がその後に着くのか、まだ明らかになっていない。明らかなのは、政治局員のメンバーの中に外交のエキスパートがいないという点だ。

中国は先日、南沙諸島や北部インドの一部を中国領と表示したパスポートを発行して、トラブルを引き起こしたばかりだ。そこに色濃く見られる覇権主義的な傾向は、中国に成熟した外交が存在しないことの現れだともみられる。

中国の新指導部は、覇権主義的な外交姿勢を改めて、もっと抑制の利いた外交を展開できるのか、日本にとっても他人ごとではない。(写真はAPから)





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