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盲目の人権活動家陳光誠(Chen Guangcheng)をめぐる米中のさやあて


盲目の人権活動家として世界中に知られている陳光誠(Chen Guangcheng)氏が、山東省での自宅軟禁状態を逃れて北京のアメリカ大使館に逃げ込んだことを巡って、一時米中間に緊張が走ったが、中国側が陳光誠氏の安全を保障し、なおかつ家族との面会も約束したことで、陳光誠氏は中国国内にとどまることを決意し、アメリカ大使館を出て、北京市内の病院に入院することになった。これは、米中両国が、深刻な対立に発展する事態を避けた、大人同士の取引だとして、一部メディアの評価もあったほどだ。

ところが、病院で妻と面会した後で、陳光誠氏はあらためてアメリカへの亡命を希望する旨の表明を行った。理由は、自分の不在中、妻が拷問を受けたことを知らされ、中国にいては自分たちの身の安全が確信できないと判断したためだという。

こんなわけで、陳光誠氏の亡命問題は、依然として米中間の火種としてくすぶっているといえる。

陳光誠氏は、地方官憲による人民の虐待事件に深くかかわり、不当に抑圧されている人々に対して法的な援護活動を行う傍ら、共産党支配に伴う政治腐敗を糾弾し続けてきた。その姿勢が地方官憲の怒りを買い、2006年に懲役4年の実刑判決を食らい、釈放後も自宅軟禁をうけて、様々な迫害を蒙ってきた。

地方官憲による一連の不当な抑圧について、陳光誠氏は温家宝首相に公開書簡を送り、正確な調査と厳重な処罰を求めた。これに対して共産党の中央部では、地方当局に対する調査を約束する姿勢を見せたとも伝えられた。

一方、陳光誠氏がアメリカ大使館を出るにあたって、中国外務省が出した声明の中では、中国側はアメリカに対して内政干渉はするなと強く非難した。この問題を人権にかかわる事案としてではなく、やっかいな外交問題としてとらえているわけである。

いまのところ陳光誠氏は、アメリカ大使館に騙されたといっており、このまま中国国内にとどまりたくはないと、強い意思表示をしているようだ。

大人同士の取引も、取引の材料たる子どもが駄々をこねていては、まとまるものもまとまるまい。子どもが本当に望んでいるものは何なのか、それを十分把握したうえで、仕切り直しをしたほうがいいのかもしれない。(写真中央が陳光誠氏:WPから)





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