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重慶副市長王立軍(Wang Lijun)の亡命騒ぎ


重慶市副市長兼公安局長の王立軍(Wang Lijun)が一時成都市にあるアメリカ領事館に政治亡命を求めたとされる事件を巡って、いま中国のネット世論が大フィーバーを起こしているという。

王立軍は重慶市長薄熙来(Bo Xilai)の片腕として、重慶マフィアの撲滅や役人の腐敗追放運動の先頭に立ってきた人間だ。薄熙来が今年の秋の共産党大会で首相になるだろうと噂されている中で、彼も中央での昇進が確実視されていた。それなのに、ほかならぬボスの薄熙来によって切り捨てられてしまったのだ。生命の危険を感じたらしい王立軍は、ただちに成都のアメリカ領事館に駆けつけ保護を求めたが、薄熙来は部下に命じて17台のパトカーで追いかけさせ、一時アメリカ領事館を取り囲んだ。

これを察知した胡錦濤(Hu Jintao)は、薄熙来の動きをけん制したうえで、王立軍の身柄を北京に移動させ、調査を開始すると発表した。

これが事件の概要だが。なぜ今のこの時期に、こんな訳のわからぬ事件が起こったのか、ネット世論では侃侃諤諤の議論が巻き起こった。

党大会を前にして、権力闘争が激化しているのだろうというのが大方の推察だが、それにしても味方同士であるはずの人間が何故亡命騒ぎをおこすまでに追い詰められたのか、そこのところが謎とされている。

一説には、薄熙来が王立軍を自分の身代わりに立てることによって、最近自分に向けられつつある厳しい批判をかわそうとしたのではないかとの見方もある。

薄熙来は習近平(Xi Jinping)とともに太子党のチャンピオンというべき男だが、その政治手法は極めて極左的であることが特徴だ。犯罪者の摘発に当たっても、吊るし上げや自己批判の強要など、文化大革命を思い起こさせるような手法を復活させた。そうしたやり方が、改革開放路線を進めてきた中国にあって、毛沢東時代へ逆戻りさせられるのではないかとの、恐怖を駆り立てているのも事実だ。

そういう極左的なやり方を支持する者もいるが、共産党内では少数派だ。習近平もそうしたやり方とは一線を画している。それ故、このままでは周囲から孤立してまずい立場に追い込まれる可能性もある、そう薄熙来は考えたのではないか。それ故、いままでの行きすぎの責任をすべて王立軍になすりつけることで、自分の政治的な立場の立て直しを図ったのではないか。こんな穿った見方も流れているようだ。(写真は薄熙来(左)と王立軍(右):Daily-Motion から)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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