中国を語る
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習近平:新時代の中国の指導者


来るべき8月の共産党大会で、中国の新しい時代の指導者になることが確実視されている習近平、彼の経歴や政治スタンスについて、Newsweek 最新号の記事が紹介している。Xi who must be obeyed By Melinda Liu

現在の中国共産党内には二つの大きな派閥があることが知られている。共青団派と太子党だ。共青団派は、共産主義青年団の出身者を中心に構成されているもので、胡錦濤がそのトップである。政策的には、国力充実の成果を内陸部の貧困地帯にも及ぼし、格差の縮小を図っていこうとする意向をもっており、どちらかといえば、大衆に根差した政治を心がけている。

一方太子党とは、中国共産党のエリートたちの子息を中心にしたものだ。政策的には、改革開放をもっとすすめ、中国の国力を高めることを最優先にしている。格差の縮小よりも、パイの拡大が主要目的だ。どちらかというと、政権内での自分たちの既得権益に敏感で、保守的なスタンスが目立つ。

2007年の党大会に際して、誰を次期の指導者候補にするかを巡って、共産党の指導部内で深刻な対立があった。胡錦濤は自分の後輩で共青団出身の李克強を抜擢しようとした。しかし太子党の強力な巻返しにあって、秘密投票によって選ぼうという申し合わせが成立、その結果習近平が浮上した。

これは現在の共産党内で、太子党といわれる派閥が、胡錦濤の権力を制限するほど強力になったきた事実を物語ったものだった。

習近平の父親習仲勳はケ小平の改革開放路線の推進者として、経済特区の指定や外資導入に実績をあげた人物だ。息子の習近平も中国経済の近代化に最大の関心を持っている。

父親も息子も順調な時期ばかりではなかった。父親の方は文革時代に弾圧され、投獄された経験を持つ。息子もまた、陝西省の田舎に下放させられ、学問ではなく肉体労働をして若い時代を過ごした。彼ら親子がチャンスをつかんだのは、毛沢東が死んでからだ。こんな背景があって、習近平は文革や毛沢東時代には批判的であり、その分、ケ小平の推進した経済発展を重視しているようだ。

先日アメリカ副大統領のバイデンが中国を訪問した際、習近平は文化革命を批判し、自分ら親子がどんなひどい目にあったかについて語ったそうだ。普通中国の指導者はそんなことは口にはしない。自分が伝統的な共産主義者とは違うのだということを、アピールしたかったのかもしれない。

ともあれ今年の党大会では、現在370人体制の中央委員会のメンバーのうち、60パーセントが入れ替わるとみられている。習近平を筆頭にした第5世代といわれる新しい指導部が中国をどんな方向に導いていくか、世界中の注目を集めているところだ。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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