中国を語る
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中国現行法制度の問題点:賀衛方氏の指摘

北京大学法学院教授で、中国の司法改革に向けてメッセージを発し続けている賀衛方氏が、日本誌「世界」のインタビューに答え、中国現行法制度の問題点について語っている。

氏は中国現行法制度の欠陥を四つあげている。第一に、法律がいまだ最高の規則になっていないこと。憲法は最高の規則ではなく、共産党が憲法や法律のすべてを超越する存在になったままだというのである。

第二に、立法のプロセスが真に民主的なものになっていないこと。最高の立法機関と位置付けられている全人代の代議員は人民が直接選出したわけではなく、したがって選挙民に責任を有しているわけではない。彼等が年に一度出席して行われる会議は、共産党指導部の決定を追認するだけのパーティに過ぎない。

第三に、司法の独立性が確立されていない。司法は共産党のコントロール下にあり、行政権力の影響や関与を受けている。また、司法に確定性が欠けている。最高裁が判決を下しても、それが最終的な判断でない場合が往々にしてある。恣意的に再審が行われ、別の判断が下されることもある。

第四に、法律のあり方そのものに問題がある。訴訟法上の規定を完全に満たしているにかかわらず、裁判所に受理されないといった事態が日常的に発生している。人民は自分の権利を守るために、裁判に訴えることもできない。

要するに法治主義が確立されていないということだ。法律よりも、共産党指導部の意向が優先する。いまだ人治主義が横行しているわけだ。

これは、中国共産党の創始者である毛沢東に原因がある。一九五四年に憲法が制定された時、毛沢東は「多くの条文があるが、何を規定しているか自分もわからない」といって、憲法を軽視する姿勢を示したという。いまも中国共産党に蔓延する「法律など不用」という姿勢は、毛沢東の遺産だというのだ。

次世代の中国首相の最有力候補と云われる薄熙来が、最近「打黒」と称して大々的な暴力団追放運動を繰り広げたことに対して、氏はそれが、法的手続きを無視した恣意的な摘発だとして、批判している。

たとえば、8か月のうちに3000人あまりを逮捕・拘束し、拷問によって自白を得たとされるが、もしそれが事実とすれば恐ろしいことだという。

被疑者の逮捕にかんしても、民衆を動員しての吊るし上げと云った、文革時代を思わせるような行動がみられたという。





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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