中国を語る
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チベットの売春ビジネス

門倉貴史著「中国経済の正体」(講談社現代新書)を読んでいたら、チベットにおける売春ビジネスの話が出てきて、聊か関心をそそられた。中国経済の特徴である地下経済の一例として売春ビジネスが取り上げられているのだが、いまやそれがチベットでも盛んになってきているというのだ。

中国では、買売春は表向きは違法であり、したがって正確な統計はない。しかし一説によれば中国全体で少なく見積もっても170万人、最大で600万人もの売春婦がいるであろうと見積もられている、そう門倉氏はいう。

売買春が行われるのはホテルの客室やマッサージ店などであり、顧客の中心は外国人観光客ということらしいが、最近は金を持った中国人男性も増えてきているということだ。身体を売る女性は主に農村部から都市に出稼ぎに出てきた女性たちで、動機は経済的なものが中心だが、中には人身売買の被害にあった女性もバカにならない数になるらしい。

チベットでは、1980年以前には売買春が行われていたことを示す証拠はない。90年代以降になって、ラサやシガツェを中心に多くの売春宿が集積するようになった。

チベット女性協会によれば、2005年時点で、ラサとシガツェにある売春宿の数は約1600件、売春婦の数は1万人以上にのぼるという。そのうち4分の3は中国人女性で占められているが、ウィグル人女性や東欧諸国からの出稼ぎ女性に混じってチベット人女性の割合も増えてきているという。

チベットで売春が盛んになってきたことの背景には、チベットへの漢族の進出がある。中国共産党当局は、チベット人による分離独立運動を抑圧するために、膨大な数の治安部隊をチベットに送り込む一方、漢民族による植民活動を進めてきた。

今日、治安部隊だけでも30万人がチベットに駐留しているといわれる。それは軍人からなっているから、すべてが男たちだ。男たちからなるこの巨大な集団が買売春の温床を作り上げているのだというのだ。

中国による歪んだチベット支配が、買売春というかたちで矛盾を噴出させているということか。





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