中国を語る
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ジョージタウン大学生が中国の核弾道ミサイル保有状況を調査


米ジョージタウン大学の学生たちが中国の核弾道ミサイルの保有状況を調査した報告者が、ペンタゴンをはじめアメリカの政府機関や議会の熱い視線を集めている。363ページに上るこの報告書は、中国がアメリカの想像を超えて多くの核弾道ミサイルを保有し、アメリカの安全にとって大きな脅威になっていると警告している。

これまで、核弾道ミサイルを巡るアメリカの関心事はロシアであった。これまでの戦略兵器削減交渉を通じて、互いの手の内を明かし合い、不測の事態を防止する努力も続けてきた。その結果今日では、アメリカが保有する核弾道ミサイルは5000、ロシアは8000ということでバランスをとってきた。中国については、不透明な部分が多くて正確なことはわからないとしながら、せいぜい80から400くらいではないかと推測されてきた。ところがこの報告書は、中国はすでに3000もの核弾道ミサイルを保有すると結論付けたのだ。

中国はこの核弾道ミサイルを、巨大なトンネルシステムの中に配備展開している。敵からの核攻撃に十分対応できるようにとの配慮からだ。このトンネル網と核弾道ミサイルの管理に関する責任は人民解放軍第二砲兵師団が負っている。その師団は2009年の12月に、中国国内のトンネル網は5000キロ近くにもわたっていると公式に認めたそうだ。

この研究を率いたのはフィリップ・A・カーバー(Philip A Karber)氏。冷戦時代に国防省の戦略スタッフとして活躍した人だ。

2008年の四川省大地震の際に、中国発のニュースが、大規模な放射能の研究スタッフが現地に派遣されたことを伝え、また地震によってトンネル網が破壊された様子を伝えた。カーバー氏はこれらのニュースから、トンネルが核ミサイルの貯蔵に使われているのではないかと推測したのだった。

氏は早速ジョージタウン大学の学生たちとともに、中国のミサイル開発に関する調査研究のプロジェクトを立ち上げた。グーグル航空写真などを使った地味な調査が中心だったが、第二砲兵師団が作成した400ページにわたる極秘資料を特別な人脈を通じて手に入れたこともあった。こうした活動の成果として、今回の報告書が生まれたというわけだ。

中国が経済成長を背景に、国防に膨大な金を使っているらしいことはかねてから指摘されていたことだ。しかしその実態には不透明な部分が多く、とりわけ核開発や原子力兵器の実態は、闇に包まれたままだった。この報告はその闇をいくぶんかは照らしだした形だ。(写真はカーバー氏の研究プロジェクト:ワシントン・ポストから)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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