中国を語る
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中国社会の「黒化」現象:はびこる官制暴力団「治安聯防隊」


過日、中国浙江省で地方行政当局による土地収用に強い異議を唱えていた人物が、公然とトラックに轢かれて殺されるというショッキングな事件が起こった。多くの中国人たちはこの事件を、官憲がやくざたちにやらせたものだと、受け取っている。

この事件で伺われるように、最近の中国では、土地の収用などを巡って、地方当局が暴力団を活用するケースが目立って増えているらしい。

中国社会がそうした暴力に染まっている傾向を「黒化」というのだそうだ。その実態を雑誌エコノミストの最近号が報告している。(中国視窓 社会をむしばむ「黒化」)

黒化の担い手として注目されるのは「治安聯防隊」という暴力団組織だ。建前は民間人が組織する自警団で、警察に似た制服を着て、警察の補助部隊として街の治安維持にあたることになっている。だが実際は暴力団そのものだ。

彼らは地方当局の手先となって、反体制派の住人を抹殺したり、時には婦女暴行などの犯罪行為を起こしては世間の顰蹙を買っている。

先日もこの連中のために妻が暴行され、それを夫が怖がって助けなかったために、妻が自殺するというやりきれない事件が起きたそうだ。この事件に見られるように、「治安聯防隊」の構成員は、粗暴な点では日本のやくざも目をむくほどだ。

この組織は公安部(日本の警察庁にあたる)の肝入りで20年前にできたものだ。そもそもは地元住民の出資でつくる自警組織のはずだったものが、結果的には末端の行政機関が用心棒代わりにつかうことで、暴力団を合法的なものにさせたのである。

公安部は2004年に「4年以内に治安聯防隊廃止」の方針を立てたが、実際はそれに反して数を増やしているらしい。広州市だけで16万人もの治安聯防隊がいるとの推測もある。

ここ数年中国は好景気に沸き、道路や鐡道の建設が急ピッチで進んでいる。その建設をスケジュール通り進めるために、強制収用に抵抗する住民を排除する必要が高まってきた。そうした背景が官制暴力団ともいえる「治安聯防隊」のような暴力組織をはびこらせているわけだ。(写真は南方日報から)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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