中国を語る
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高揚する民意が中国当局を走らす


高速鉄道事故の対応をめぐって、高圧的で国民を愚弄するかのような言動を繰り返していた中国鉄道省の報道官が解任された。当局の責任を追及する広範な世論の盛り上がりを、共産党の指導部が無視できなくなったことのあらわれだ。

大連では事故を起こした化学工場の移転を求めて1万人の現地住民がデモを繰り広げ、これを受けた形で、地元当局が工場の即時操業停止と移転を約束した。これもまた、世論の盛り上がりを共産党指導部が無視できなかったことの現われだ。

このふたつの事象は何を物語っているのか。

中国でも、民衆の権利意識が高まり、恐れずに声をあげるような時代がやってきたということだろう。

だが共産党は、一方で世論に妥協する姿勢を見せながら、他方では言論統制など古臭い手段にしがみついている。中国版ツィッターと呼ばれる「ウェイボー(微博)」はいまや中国の世論形成に大きな役割を果たしつつあるが、当局はこれをシャットダウンさせるなど、不都合な情報の取り締まりに躍起になっている。

こうしたやり方は、いつまでも続くわけでもなかろう。一旦民主化の流れができたところでは、それを押しとどめることはできない、これが歴史の教訓だ。

中国共産党はこうした流れに棹差して、透明で民主的な権力運営を模索しない限り、いずれソ連と同じような事態に見舞われるだろう。かといって、西欧並の民主主義を導入すれば、共産党の一党支配にひびが入るかもしれない。

中国は大きなディレンマを抱えながら、大国として世界に己を開いていかねばならないだろう。(写真は大連のデモ:APから)





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