中国を語る
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中国は何故全面否定したか:レーダー照射問題

中国軍艦が日本の護衛艦に射撃用の管制レーダーを照射した問題について、中国側がどのような対応をするか注目されていたが、結局事実を全面否定するという態度を示してきた。事実を否定するのだから、日本側の言い分は根拠がないという主張になる。つまり、今回の日本側の指摘は悪質なでっち上げと言うことになり、日本側は根拠のない中傷を行うことで、日中間の対立を意図的に煽っていると逆に日本を非難する態度に出たわけである。

これは予想されなかった反応ではない。予想された反応のなかで最も深刻な結果につながるのは、中国側が事実をあっさりと認めたうえで、それが正当な根拠を有する行動であり、したがって中国は今後も繰り返し同じようなことを行うであろうと開き直ることである。そう開き直られては、日本としても引っ込んでいるわけにはいかないであろうし、派手な正面対立に発展する恐れが多分にあった。それに比べれば、中国側は事実を否定することで、この問題に関してはこれ以上進展させないという意思を示したわけだから、これは微温的な反応だといえなくもない。

そこで問題なのは、決定的な対立を避けたいのであれば、何故管制レーダー射撃のような危険な行動をとったのかと言うことだ。それが前線の勝手な判断による暴発的な行動であったとはどうも考えにくい。習近平をはじめとした共産党のトップが知らなかったわけはないと思うのだ。

習近平には日本を威嚇する意図があったのだと思う。威嚇することで日本の戦意をくじこうと思ったのかもしれない。しかし日本が予想以上に強硬に反応し、これにアメリカが同調して中国非難をし始めた。もしも事実を認めたとしたら、中国は好戦的で国際ルールを守ろうとしない国だという非難を招くかもしれない。とりあえずそういう事態は回避したい。そういう計算が働いて今回の全面否定につながったのではないか。反応するまでにかなりな時間がたっていることが、そうした推測を裏書きしていると思う。

全面否定されては日本側の面子が立たないともいえるが、ここはひとつ冷静になった方が良い。今日の日本の技術水準をもってすれば、日本側の主張には十分な根拠があるということくらい、先進国の軍事関係者なら誰にもわかることだ。とぼけているのは中国の方だということは明々白々なのだから、なにも事実を巡って口角泡を飛ばすまでもない。中国の今後の行動に一定の縛りをかけられるように、高等戦術を練る方が得策だと言える。





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