中国を語る
HOMEブログ本館東京を描く漢詩と中国文化陶淵明日本文化ロシア情勢|プロフィールBBS


習近平の冒険主義にどう向き合うか


尖閣をめぐる中国の挑発行為が次第にエスカレートしている。昨年12月13日に初めて領空侵犯して挑発の度合いが新たな段階に入ったことを感じさせたばかりだが、最近もっとゆゆしい事態が発生していたことがわかった。今年1月30日に、中国の軍艦が日本の海上自衛隊護衛艦に向けて射撃用の管制レーダーを照射していたというのだ。また1月19日にも、中国の軍艦が海上自衛隊のヘリコプターに向けてレーダー照射と疑われる行動をとったともいう。

管制レーダーを照射するのは、ミサイルなどの武器を発射することを目的として、的に標準をあてる行為だ。だから向けられた側は、銃を突きつけられているのと同じ感覚を味わう。まかり間違えば、戦闘行為に発展するおそれのある非常に危険な行為だ。

こうした行為が果して軍による独走なのか、それとも共産党首脳部が深くかかわってのことなのか、さまざまな憶測を呼んでいるところだが、習近平をはじめとした共産党指導部がかなり強くかかわっているということを、先日の朝日の報道(2月4日朝刊)が語っていた。

記事によれば、日本政府による尖閣国有化の直後(9月14日)、共産党指導部が、軍を含めた各部門が統一的に動く状況を作り上げるために、「中国共産党海洋権益維持指導小組」というものを作り、そのトップに共産党総書記自らつくという体制を立ちあげた。この小組のメンバーは、無線やテレビ電話などをつかって直接現場に指示できる体制になっているようだから、尖閣をめぐる動きは、すべて習近平以下の共産党首脳部の把握するところだという。つまり、一連の中国側の動きは、習近平の了解のもとになされていると考えていいわけである。

気になるのは、この小組のできた当日(9月14日)に、中国軍の総参謀部が「戦争の準備をせよ」と、全軍に支持をだしたということだ。その時には習近平はまだ総書記にはなっていなかったが、その決定に深くかかわっていたことはほぼ間違いない。

こうしたことから見えてくるのは、中国側が日本との戦争をも視野に入れて、挑発活動をエスカレートさせているということだ。筆者などの目には、それは習近平の冒険主義として映る。習近平は1月25日に公明党の山口代表と会っており、その会談の席上日中関係の改善に期待を表明して見せもしたのだが、その数日後に上記のような事態が起き、しかもそれを十分了解していたということになれば、彼の冒険主義の根深さを感じさせる。

その冒険主義の背景には、軍の強い意向があるらしい。中国軍は日本との局地戦に備えて着々と準備しているとされ、しかもかなり自信があるようだと伝えられている。その局地戦と言うのも、尖閣周辺での限定した戦いではなく、自衛隊の基地や港をミサイルで破壊して戦闘能力を失わせるという、先制攻撃をも視野に入れたものを考えているらしい(朝日の当該記事による)。

中国がそんなことをすれば無論アメリカをも巻き込んだ日中の全面戦争に発展するだろうから、これはまことに由々しい事態といわねばならない。(一部の日本人たちは大喜びするかもしれないが)

日本側としては、習近平の冒険主義的な体質を十分に踏まえながら、今後の日中関係に向き合っていかねばなるまい。





HOME|次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2013
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである