中国を語る
HOMEブログ本館東京を描く漢詩と中国文化陶淵明日本文化ロシア情勢|プロフィールBSS


日中の知られざる攻防:中政懇の記録から


日中の防衛関係者の間で、定期的な意見交換の場が設けられているそうだ。日本側からは退役将校が中心となり、中国側からは現役の将校が参加して、日中間の相互理解を目的に、忌憚のない意見交換を行っているという。

日本側の受け皿である中政懇(中国政経懇談会)は1977年に結成された。当時中国の副主席だったケ小平の呼びかけで、日中の軍事対話の受け皿として結成されたものだ。以後毎年中国に赴いて、日中間に横たわる様々な問題について議論してきた。今年で第34次になる。

近年、中国の軍事力が飛躍的に強化され、それを背景に東シナ海や南シナ海を舞台に、中国の軍事的プレゼンスが高まり、尖閣諸島では日中衝突の可能性すら懸念されるようになってきた。こんな時期には、双方が互いに理解しあうことがますます重要になる。理解不足がそれこそ不測の事態を生みかねないからだ。

幸いこの対話は、日中の対立が高まったときにも、粛々と運営されてきた経緯がある。小泉時代に日中の関係が極めて疎遠になったときでも、この対話は粛々となされ、日中間の貴重なパイプとして機能してきた。

こうした過去の財産を生かす形で、今後日中の対話が深く進んでいくことが、日本の国益上有効であることはいうまでもない。

今回NHKが、この日中対話の様子を特別に取材して放送した。(国境の海 日中 知られざる攻防)

番組は過去の対話を含めて、会議の模様まで放送していたが、それを見て、日中双方ともに、相手のことを十分に理解しているとはいえないのではないかという懸念を感じた。たとえば航空機や潜水艦の行動に関する認識において、日中はそれぞれ異なった基準で判断しているのではないかというようなことだ。日本側が重大な主権の侵害と捉えるようなことを、中国はそう捉えていない。これは重大な認識の齟齬だ。国同士の武力衝突がこうした齟齬から始まることは、これまでの歴史が物語るとおりだ。

こんなわけで、日中関係はまだまだ成熟していない部分が多くあると感じた。中国は日本にとっては、いやおうなく付き合わざるを得ない大国なのだから、相手のことを徹底的に理解する必要がある。また相手にも自分のことを徹底的に理解してもらう努力が必要だ。

ともあれ、国防というクリティカルな部分で、両国の間にこのようなパイプが機能していたことを知り、大いに心強いものを感じた。





前へ|HOME中国事情次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである