中国を語る
HOMEブログ本館東京を描く漢詩と中国文化陶淵明日本文化ロシア情勢|プロフィールBSS


中国とどう付き合うか:レアアースの対日禁輸措置


尖閣諸島での中国漁船問題をめぐって、中国側の強硬な姿勢が目立ってきた。当初は船長の即時釈放を、あらゆる機会を通じて執拗に求めるという姿勢に徹していたのが、政府レベルのさまざまな交流を停止したり、日本への観光旅行の自粛を国民に求めたりした挙句、ついには中国の資源の切り札といえるレアアースの対日輸出を禁止する措置まで打ち出すに至った。

これに対して日本政府は、尖閣諸島をめぐって領土問題は存在しないとの従来の主張を繰り返し、船長の扱いについては国内法に基づいて粛々と対応すると答えている。

日本政府としては当然のことだが、それが中国政府にとっては、おいそれと見逃せない問題を孕んでいるのだろう。なにしろ中国共産党は、長い間国民の思想統制の中でも、反日教育に熱心であったわけだし、尖閣諸島については中国固有の領土を日本が不法に支配しているといった見方を植え付けてきた。

だから今回の問題を巡っては、中国政府としては、国民への手前、一歩も譲ることのできない事情を抱えているのだとみられる。日本側に一歩でも譲歩すれば、それは国民に対して申し訳のできないことをしたことになる、そんな構図が出来上がっているようなのだ。

つまり中国政府は自ら国民の頭に植え付けてきた怨念によって、逆にがんじがらめになっているといってよい。それがこのようなめちゃくちゃともいえる対日姿勢につながっているのではないか。

それにしても中国政府のやり方は、あまり利口であるとは言えない。外交上の案件を、力づくで解決しようとするのは、少なくとも21世紀の国際関係のあり方とはとてもいえぬ。中国政府にはその辺がよくわかっていないのか、あるいは大国意識に酔うあまりに、国際社会の常識が見えなくなっているのか。

ニュー・ヨーク・タイムズなどは、今回のレアアース禁輸を巡って、資源の安全保障の重要性を改めて取り上げている。

レアアースは言うまでもなく、今日の先端技術にとっては、なくてはならないものだ。そのほとんどすべてといってよい部分を中国が握っている。もし日本が中国から長期間にわたってレアアースを輸入できない事態になった場合、日本の産業が蒙る打撃は計り知れない。

これを他山の石として、アメリカも今のうちから、レアアースの安定的な供給に向けての条件整備をしておくべきだと、NYTは主張しているのだが、その裏側には、中国のなりふり構わぬ行動パターンへの不信感があるといってよい。

日本政府の中でも、前原外務大臣などは、中国の主張には根拠がないと強気な態度に徹しているが、仙石官房長官などは、場合によっては政治的な妥協をする余地もあることをほのめかしている。

妥協はいつの時代でも、必要なときにはなされてしかるべきだが、しかし時と場所をよく選び、問題の本質を見極めてからにする必要があろう。





HOME日中関係次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである