中国を語る
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中国の金融政策

渡辺真理子氏の論文「金融は中国経済のアキレス腱か?」(中国経済入門)によって、中国の金融政策の変遷を眺めてみよう。

改革開放以前の中国には、我々が金融と云う言葉で思い浮かべるような事象は存在していなかった。存在していたのは、中央銀行としての中国人民銀行と、人民銀行が国有企業等との間で行っていた金のやり取りだけだった。そのやり取りも、国庫内の資金の移動にすぎなかった。やり取りの主体が国家というひとつの有機体の構成員に過ぎなかったからだ。

つまり銀行は、他人の間で資金を仲介するという本来の機能を持たず、政府内での資金の移動を帳簿に書き留めるだけの名目的な存在にすぎなかったわけだ。

改革開放によって、中国の金融はどのように変わっていったか。一言でいえば斬新的な改革である。

経済主体としての企業から見た金融の機能には、銀行を中心にした間接金融の部分と、証券市場を舞台にした直接金融の部分がある。社債や株式などの債権を以て必要な資金を調達するが直接金融、銀行を通じて必要な資金を借り入れるのが間接金融だ。このどちらにウェートがかかるかは、先進資本主義国の間でも相違がある。日本やドイツは間接金融に比重があり、アメリカやイギリスは直接金融に比重がかかっている。

中国では、改革開放後は、まず間接金融の部分を充実させ、その成功を見極めてから、直接金融の土台作りにとりかかるといったやり方を取った。手始めは銀行制度の改革である。

従来人民銀行ただひとつしかなかったところに、複数の銀行を付け加えた。そのことで、人民銀行には中央銀行本来の役割を担わせ、資金の仲介と言う市中銀本来の役割は新たな銀行に担わせることとした。

最初に設立された市中銀行は、都市部の商工業者への融資を主とする中国工商銀行、インフラ向け融資を主とする中国建設銀行、外国貿易を専門とする中国銀行、農業向け融資を主とする中国農業銀行、この四つである。いずれも国営銀行だ。

1995年には商業銀行法が改正され、融資対象の制限を外されて、自由に顧客を選べる商業銀行へと脱皮した。また第二分類銀行と呼ばれる地域性商業銀行や株式制商業銀行も生まれるようになり、銀行のメニューは次第に先進国並みに近づきつつある。

中国人民銀行はこれら市中銀行との間で資金のやり取りを行い、その際の利子率を変動させるなどの方法によって金の流れをコントロールしている、その辺はすでに先進国並みになっているといってよいだろう。

一方証券市場の方はまだ生まれたばかりの状態だ。上海の証券市場も、産湯の煙を立てているような状態だ。だから企業が証券市場を通じて十分に資金を調達するという段階には至っていない。





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