中国を語る |
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足浴按摩:呉越紀行その七 |
食後、和子足浴富安那なるところに案内せらる。看板に足浴休閑保健按摩と記せり。即ち温泉つきマッサージなり。 二階の薄暗き廊下に面する部屋に入れば、四人分の按摩台設けられてあり。リクライニングシートと丸椅子の組み合わせに温水浴用のバケツなり。バケツの中は薬草を浮かべたる温水なり。それに両足を入れたるところ頗る熱し。かくて足を温めをるうち女按摩師四人部屋に入り来れり。いづれも二十代半ばと思し。 女は丸椅子に腰かけて客の足をバケツから引出し、膝の上に据ゑるや指の間を丁寧に磨けり。しかるのち足の裏に指圧を施す。力まかせに圧せらるるや頗る痛し。女痛ければトンといふべし、しかれば手加減せんといふ。くすぐったき時にはいかにいふべきや、と問ふにヤンといふべしと応ふ。トンは痛、ヤンは痒、両者合はせて痛痒なり。 余はさして痛くも感ぜざりしが、両脇のものはトントントンとトンを連発す。 部屋の壁には、厳禁賭博、厳禁吸毒販毒、厳禁買淫婦娼と墨書してあり。さては按摩をなすと見せかけて不良行為を働くもの少なからずと見えたり。 足裏按摩の後は上半身の按摩なり。女我が頭を両腕に抱ふるや、前後左右上下斜行に運動せしむ。余眼のクラクラするを覚ゆ。女また我が背後にまはりて両腕を後ろ手に持ち上げ背中を締め上ぐ。余筋のキリキリするを覚ゆ。 余女に向かって、按摩をなすにはライセンスが必要なりやと問ふ、ライセンスの制度はあらざれど、それなりの修業期間は要すべしと答ふ。 かくて小一時間身体のあちこちを按摩せられ、余は聊か陶然たる心持になりたり。仕事を終ふるや女どもは倉皇として去る。故にチップを手渡す機会を逸したり。 館を辞して後付近の便利店(コンビニをかくいふなり)にて紹興酒一瓶を買ひ求め、ホテルの部屋にて飲む。 投宿先はラマダホテル(無錫華美達梨庄大酒店)なり。 |
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