中国を語る
HOMEブログ本館東京を描く漢詩と中国文化陶淵明日本文化ロシア情勢|プロフィールBBS


中露は絆を深めたか


先日行われたG8サミットにはメドヴェージェフを代理に立てたプーチンが、北京で開催された上海協力機構には自ら出席した。またそれに先立ち、中国の胡錦濤主席とトップ会談を行い、ロシアが東アジア、特に中国を重視していることをアピールした。

中露首脳会談のテーマは二つあった。一つはシリアやイランを巡る対応だ。とりわけシリアを巡っては、ロシアは欧米から厳しい批判にさらされているので、せめて中国とは同一歩調を取って、自分だけが集中攻撃の矢面になるのを避けたい、そんな思惑が透けてみえた。

シリア問題を巡っては、中露ともに、アサドによる人権侵害を批判しつつも、欧米諸国がシリアの内政に干渉する形でアサドに圧力をかけることを批判した。欧米諸国にはいかなる事情があっても、シリアの内政に干渉する資格はない、シリアのことはシリア人自身に任せるべきだ、というのが中露両国の従来の立場だ。今回はそれを改めて確認したということだろう。

もう一つは、経済協力だ。ロシアは中国市場をますます重視している。プーチンの最大の関心事は、中国との間でパイプラインを敷設し、石油や天然ガスを高い値段で、しかも長期的な契約のもとで買ってもらうことだが、中国との間では値段を巡って折り合いがつかず、パイプラインはまだ機能していない。そこをなんとか打開したいというのが一つ。

もう一つは、中露間の貿易をもっと均等なものにすることだ。現在の中露貿易は、ロシア側から石油資源などの一次産品を輸出し、かわって中国から機械製品などの二次産品を輸入する構造になっている。これがロシア人の目には屈辱的に映るようで、ロシアは中国からもっと工業製品を買ってもらいたいと迫ったようだ。

さて、6日から開かれた上海協力機構で最大の問題になったのは、中国が提案した上海協力機構開発銀行の設立だ。これは各加盟国が金を出し合って基金をつくり、その金を加盟国のインフラ整備のために使おうという構想で、アジア版の世界銀行みたいなものだ。

この構想は、ロシアにとっては、アジアにおける覇権を中国にとられるのではないかとの懸念をもたらしているようで、他の加盟国が関心を示している中で、ロシアだけは反対する姿勢を示した。ロシアとしては、プーチンが先日持ち上げたユーラシア構想を軸にして、ロシアを中心にした国際経済秩序を作りたい、中国の後塵を拝するのはまっぴらだ、というのが本音のところだろう。

この会議には、イランのアフメジネジャド大統領がオブザーバーの形で出席したほか、アフガニスタンのカルザイ大統領も出席した。こうした動きは、アフガニスタンからの米軍撤退を控えて、地域の安全保障を加盟国相互で図っていこうとする意欲が現れていると評価されている。(写真はAPから)





HOME|次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである