中国を語る
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無能なのか、とぼけているのか:中国の北朝鮮対応


北朝鮮の妄動ぶりを見据えた米韓合同軍事演習が、11月28日から12月1日までの4日間の日程を終了した。韓国内に高まる北朝鮮への強硬論を踏まえて、韓国政府は北朝鮮によるいかなる挑発にも、断固とした姿勢を貫くと明言していたが、幸か不幸か、新たな軍事衝突の事態は起こらなかった。このことで最も安心感を覚えたのは、紛争の当事者以上に、中国の指導者たちであったろう。

北朝鮮によるヨンビョン島砲撃事件が起こった際、中国は一躍、国際社会からの要求を突きつけられた。中国は、歴史的にも経済的にも北朝鮮と深いつながりを持ち、それをもとに強い影響力を発揮できる立場にあるにもかかわらず、何かにつけ北朝鮮を甘やかしてきた、その結果が今回の事態につながったのであるから、中国は事態を深く反省し、大国としての責任を果たすべきだ、こんな要求を各国から突きつけられたわけである。

こうした声を、中国としても無視するわけにはいかない、そうかといって、北朝鮮に対して余りつれなくあたるわけにもいかない、こんなジレンマに陥ったのだろうか、とにかく従来の六カ国協議の枠組みを利用して、話し合いの場だけでも持とうではないかと、悠長なことを言い出した。

これに、韓国やアメリカが反発したのはいうまでもない。今回の事態は、北朝鮮の犯罪的な行為が招いたことなのだから、まず北朝鮮に謝らせてから、その責任を明らかにし、再発防止に向けた制約をさせるのが筋だ、それなのに、中国ときては、北朝鮮の責任問題をすべて棚上げにした上で、北朝鮮が求めてきた六カ国協議の再開を云々している、これでは全く北朝鮮の要求に屈するばかりではないか、全く以て話にならぬ、米韓が反発するのも無理のない話だ。

こんなわけで、米韓始め関係国は、中国の態度に強い不満を抱くとともに、その余りにも不器用なやり方に首をひねってもいるようだ。

一体中国はどういうつもりで、六カ国協議云々などと、ばかげたことを言い出したのだろうか。もしかして、事態の進展に仰天する余り、とりあえず自分を含め関係国の頭を冷やそうとして、時間稼ぎをしたのだろうか。

もしそうなら、中国の思惑はある程度成功したといえるかもしれない。すくなくとも、材料を投げかけたことによって、各国が頭をひねっている間に、時間が流れたせいで、新たな衝突は起きなかったわけだ。それ故、上述したように、中国は一番ほっとしたわけだろう。もし何かとんでもないことが重ねて起きていたら、中国はそれこそ面目丸つぶれだったにちがいない。

だが、それだからといって、事態が本格的に収まりを見せたわけではない。ボールは北朝鮮と、その庇護者たる中国側に投げられたままだ。

各国が中国に期待しているのは、北朝鮮を説得して、国際社会の一員となるために必要な行動をとるよう約束させることだ。中国ならできるし、逆に中国ならではできないことだ、中国は大国としてそれを行う責任がある。

こういわれた形の中国は、いや、みなさんがおっしゃるほど、わたしらは力があるわけではありませんよ、北朝鮮がわたしらの言うことを無条件に聞くなどということはありません、だからみなさんも、北朝鮮を無闇に怒らせて、不測の行動に走らせるようなことがないように、お願いしますよ、どうも中国は、こんなふうに言っているふしがある。

つまり自分たちは皆さんが思っているような力持ちではなく、むしろ無能な大男にすぎないと言い張っているように聞こえるのだ。あるいは、そのように見せかけて、北朝鮮に時間稼ぎをさせているのかもしれない。(上の写真は黄海での米韓合同演習:AFP提供)





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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011
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