中国を語る
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アジア・インフラ投資銀行(AIIB)が日米抜きで発足


中国が主導して世界各国に呼びかけていたアジア・インフラ投資銀行(AIIB)に、48カ国の国や地域が参加することになった。日米を除くほとんどの有力国とアジア諸国が参加する形だ。この構想を中国が打ち上げた時には、日米は冷ややかな視線を送り、色々な理屈を述べて、友好国に不参加を呼びかけていたが、結局その動きは無視され、主要国が雪崩を打って参加したわけだ。

これは、アメリカによる世界経済の一極支配体制が崩れて、中国が世界経済支配の一翼として台頭してくる兆候だという見方がなされている。それはそれとして、何故こういう動きが、あまりにも意表を突く形で出て来たのか、興味深いところではある。

イギリスやEU諸国とアジア諸国とでは参加の動機は異なると思うが、彼らが従来のアメリカを中心とする枠組に縛られないという意思表示をしたことは間違いない。

先進国についていえば、ビジネスチャンスの拡大を求めたということだろう。アジア諸国のインフラ整備のための資金需要には巨大なものがある。それに対して、中国が巨額のマネーを背景に、資金供給でリードしていく可能性が高い。その流れに沿うことはだから、先進国にとってはビジネスチャンスの拡大につながる。アメリカに気兼ねして、そのチャンスを見逃す手はない、そう彼らが考えたとしても、無理はないことだ。

後進国には別の事情があると考えられる。最大のものは、IMFや世界銀行を中心とした国際金融の枠組に対する不満だ。これらの国際金融機関が、後進国の経済発展に一定の役割を果たしてきたことは認めなければならない。しかし、無条件で認めるわけにはいかない。これらの金融機関には、後進国にとってマイナスの役割を果たしてきた経緯もある。たとえば、1990年代のアジア金融危機や中南米の金融危機の際に、これらの金融機関が見せた態度だ。これらの金融機関が、投資の安全性にこだわるあまり、一番金が必要な時期に、その金を引きあげることによって、後進国の経済を一層混乱に陥れてきたことは、経済学者のスティグリッツが指摘する通りだ。

こんなこともあって、後進国にとっては、IMFや世界銀行は、いざという時に自分たちを叩きのめすようなことを平気でやる、という不信感と言うか、不満が渦巻いている。その不満が、後進国をAIIBに期待させたとしてもおかしくはない。

無論、AIIBがIMFや世界銀行の代替物になるとは誰も考えてはいない。当面はあくまでも、リスクヘッジとして考えているのだと思う。IMF・世界銀行とAIIBを互いに競争させることによって、借り手である後進国の立場を少しでも強くしたい、そんな願望が働いているのだと思うのだ。

ところで、アメリカが既得権者としての立場から、この構想に反対したのは理解できるにしても、日本は何故反対したのか。納得できる理屈が見当たらない。おそらく、他の案件と同様、アメリカに隷従する体質がこれにも働いたのだろう。アメリカ親分のおっしゃることには、どこまでも従います、というわけなのだろう。

それにしても日本は、この構想の立役者である中国の当局と、この件について議論した形跡が全く見られない。国際問題で議論することは、望ましい外交上の決定を行う上で必須の条件だ。それを全くしなかったということは、日本は、この問題で、自主的な判断をする意思がなかったということなのか。もしそうなら、それは、アメリカ親分のいうことさえ聞いていれば間違いない、と言っているのと同じことになる。





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