中国を語る
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台湾の議会占拠騒ぎ


台湾では、3月18日から学生たちによる議会(立法院)の占拠騒動が続いており、24日には議会のみならず政府(行政院)まで占拠し、治安部隊が出動する騒ぎにまで発展したという。台湾のような、いわば安定した民主主義国家で、なぜこんな騒ぎが起きているのか。

ことの発端は、台湾政府が昨年6月に大陸(中国)との間で締結したサービス分野の自由貿易協定をめぐり、与党が協定発効に向けた手続きを一方的に進めようとしていることに、学生たちが反発して立ち上ったということのようだ。野党の民進党も、学生たちと一緒になって、政府に協定の撤回を求めている。

この協定がなぜ、台湾の学生たちを刺激したのか。伝わってくるところによれば、学生たちはこの協定を突破口にして、大陸による台湾支配が進み、ついには大陸に併呑されてしまうことを恐れているということらしい。

台湾と大陸との経済関係は最近非常に盛んになり、台湾の経済的繁栄は、いまや大陸との貿易を抜きにしては考えられない。今回の協定は、そうした経済協力関係を更に拡大させようとするものに過ぎないといえるのだが、学生たちには必ずしもそうとのみは映らない。この協定によって、台湾は中国への経済的依存を更に強め、それが中国による台湾の併呑につながっていくのではないか、と考えているようなのである。

時あたかも、ロシアによるクリミアの併合という事態が起った。台湾の学生たちは、台湾をクリミアに譬え、自分たちが大陸に強制的に併合されてしまうことを恐れているということらしい。かれらは、台湾が大陸に併合されることで、自由と民主主義の理念が骨抜きにされることが我慢ならないようなのである。

もっとも、クリミアの場合には、内部からロシアに呼応する勢力があったわけで、その点は、台湾とクリミアとは大いに事情が異なる。

強国による小国の経済支配という点では、TPPのほうがずっと深刻な問題を孕んでいると思われるのだが、こちらの方へはいまのところ、台湾も中国も交渉の舞台に乗っていない。





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