中国を語る
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日中両軍機の異常接近


日中間でまたきな臭い事態が起こった。5月24日、東シナ海の日中中間線付近を飛行中の自衛隊機二機に向かって、中国軍の戦闘機が背後から近づき、一時は30メートルの近さにまで近づいたというものだ。中国軍機はそのまま飛び去ったようだが、まかり間違えば深刻な事態につながりかねなかったとして、日本側は外交ルートを通じて、中国側に厳重に抗議したということだ。

これに対して中国側は、日本側が中国の防空識別圏内に侵入し、中露合同で行っていた演習を妨害したと反論し、責任は日本側にあると言いたてた。

日本側は、公海上において正当な監視活動を行っていたといい、中国側は、中国の定めた防空識別圏に日本側が侵入したといい、双方の言い分は真っ向から対立している。対立していないのは、日本側が、中露の合同演習を監視していたという事実の認識だけだ。

前回(昨年1月)、中国の艦船が日本の艦船に射撃管制レーダーを照射するという事態があった際、中国側は当初、政府が関与していないような言い方をしていたが、今回は、即座に政府としての反論を言い立てたわけで、この問題が、日中の国家間の対立であるという認識を隠そうとしていない。

これは、政府同士の疎遠な関係が、軍事の現場にきな臭い影を落としていることを物語る深刻な事例といわねばなるまい。今回の中国側の対応を見ると、軍事的な衝突が起こるのを十分に覚悟しているフシがある。このような事態が引き続き頻繁に起こるようでは、いつ、どのような事態になっても、不思議ではない。

中国側の、挑発的ともいえる行動に、安倍政権はどう対応するつもりなのか。小野寺防衛大臣から、今回の事態について報告を受けた安倍首相は、「しっかりした態勢をとってほしい」と指示したそうだ。「しっかりした態勢」とはどのようなことを意味するのか、にわかには分からないが、こうした事態への対応を現場任せにするという意味ならば、それはいただけない。それでは、政治の責任を、現場の防衛担当者に丸投げにするようなものだ。

今回の事態を含めて、このようなきな臭い事態がたて続きにおこるのは、政治が貧困なせいである。貧困な政治が、国家間の信頼を築けずに、いたずらな対立を生む。それどころか、指導者自らが、互いに相手を挑発しあい、対立を煽るような言動を繰り返す。これでは戦争にならないのが不思議なくらいだ。

習近平は、日本と戦争をしてもいいと考えているのかもしれない。それに対して、カウンター・パートナーというべき安倍晋三のほうも、喜んで応じるつもりでいるのだろうか。





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