中国を語る
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チープチャイナはもはや過去


チープチャイナはもはや過去、こんな趣旨のことを東洋経済のWEB版の記事で読んだ。題名は「中国が直面する高成長モデルの終わり」。中国がこの数年の間にすさまじい成長を遂げた結果、賃金やら物価の水準が先進国レベルに近づきつつあり、もはやチープチャイナというイメージは通用しなくなったということを書いている。

例えば身近なものの物価。上海のスターバックスではカフェラッテのトールサイズが27元もする。一元18円換算だと486円で東京より三割も割高だ。また日本では1990円で買えるユニクロのシャツが3582円もする。これらはほんの一例で、中国の物価水準は国際レベル並みになりつつあるという。

賃金もまた同様で、安い労働力が無制限に調達できた時代は去ったということらしい。そのため、中国から東南アジアなどへ生産拠点を移す動きが強まっている。日本企業の対中国投資の減少傾向は、日中対立の政治状況が主な原因だなどと言われてきたが、実際には、賃金の上昇などの投資環境の変化の方が大きいということらしい。

それには、元の上昇とあわせて円の下落が相乗効果を発揮しているのは間違いない。その結果、もっともリアルに変化を感じているのは旅行者だろう。筆者が中国に行った二・三年前と比べると、為替相場は一層の円安に振れているし、それに中国国内の物価上昇傾向を併せると、中国旅行はかなりなコスト高になった。

元高基調と物価高は、中国の対外収支環境としてはマイナスに働く。だからこれまでのような、輸出中心の経済に頼っていると、中国の成長率は大幅に下揺れすることになるだろう。高成長エンジンで突っ走ってきた経済に急ブレーキがかかると、経済は大混乱に陥る可能性が高い。そうさせずに持続的な成長を続けて行くには、堅実な内需拡大に切り替えていく必要があろう。中国は、日本と異なり、成長のための内需の余力が十分にある。

しかし、内需を堅実に拡大させていくためには、これまでのような経済運営ではだめだろう。市場環境をもっと自由化し、民間企業が思い切って投資できるような環境を作る一方、外資の導入も積極的に行っていく必要がある。中国は、世界第二の経済大国になったとはいえ、まだまだ十分な資本を民間企業が国内で調達できるまでには至っていない。やはり外国からの投資に当分頼らざるを得ない。そのためにも中国は、国際社会に対してもっと開かれた市場を用意していかねばならないだろう。習近平が安倍政権との折り合いをよくするように決意した背景には、こういう事情も働いているにちがいない。日本にしてからが、中国との健全な関係は、今後の経済にとっても重要な意義を持っている。





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