中国を語る
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中国が北極海進出を狙う背景


中国が北極海への進出に意欲的だという話を最近よく聞く。北極海には膨大な石油・ガス資源が埋蔵されているとか、北極海航路を通じてより短距離でヨーロッパとつながるとか、色々な理由が上げられている。しかし、中国は北極海に面しているわけでもないし、他国に先駆けて北極海の権益を主張できる立場にもない。それなのになぜ、北極海への進出意欲を隠そうとしないのか。

中国は、北極海に権益を有する第三国を通じて、北極海へのかかわりを強めようとしているということらしい。その第三国とはデンマークのことだ。デンマークは、米・露・カナダ・ノルウェーとともに「北極海会議」の一員だ。その一員としての立場から、北極海への排他的権利の一部を行使できる立場にある。デンマークがこのような立場を手に入れたのは、グリーンランドを領有していることの効果だ。

中国は、このデンマークと密接な関係を築くことで、北極海へのかかわりを間接的にコントロールしようということらしいのだ。デンマークは小国で、北極海会議の五か国の中では弱い立場にあるので、資金面その他で中国の後盾を得られれば、北極海へのかかわりを深めることができる。そんなデンマークの思惑と中国の思惑が一致して、中国は北極海への足掛かりを得て、積極的に進出しようという思惑を持っているということのようだ。

これに対しては、中国との盟友関係を強化しつつあるロシアは、対米けん制の意味で、後押しするモチベーションはある。一方アメリカは、面白くない立場にある。できれば中国を北極海の利権から排除したいに違いない。それ故、デンマークに対して、中国の思惑に乗らないよう圧力をかけるだろう。

どんな圧力が有効に働くか。グリーンランドには、デンマークからの独立の動きがある。アメリカがこの動きに注目しないわけはない。できればその後盾となってグリーンランドをデンマークから独立させ、それをアメリカの影響下におければ、デンマークを通じて北極内に足場を得ようとする中国のもくろみをくじくことができる。

こんな訳で、北極海においても、米中のさや当てが始まろうとしているのではないか、そう考えても不自然ではないだろう。





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