中国を語る
HOMEブログ本館東京を描く漢詩と中国文化陶淵明日本文化ロシア情勢|プロフィールBBS


インド洋をめぐる中印の確執

カシミール地方を巡る中印間の対立は、双方が紛争の現場から退却することで大事にならずに済んだ。この事件は中國側の現地指揮官の判断によるもので、中央政府が関知していない局地紛争だという位置づけで、双方の政府が表沙汰にすることを避けた結果だといわれる。

これで一安心だと思っていたら、今度はインド洋で新たな緊張が生まれた。中国の潜水艦部隊がインド洋の奥深くまで侵入してきていると、インド側が非難したのだ。インドは、中国は海洋からインドを包囲する意図を持っていると主張し、その軍事的な脅威を強調している。

中国は、ビルマ、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、タンザニアなどと協力関係を強め、自国の艦隊がそれらの国の港を行動拠点にする動きを着々と進めている。とりわけ、インドの宿敵たるパキスタンと結んで、インドを軍事的に威嚇する意図を持っている、と強く中国を批判している。

しかし中国側には中国側の理屈があるようだ。中国がインド洋に積極的に関わるようになったのは、2006年以降のことで、そもそもソマリアの海賊対策に、欧米諸国と歩調をあわせて乗り出したのがきっかけだ。中国は高い経済成長を背景に中東から大量の原油を輸入するようになり、安全な輸送ルートの確保という点から、マラッカ海峡を超えてインド洋まで乗り出す動機を持つようになった。それがインドの目には、中国からの脅威と映るようだ。

インドは、中国に対抗するために、ヴェトナムとの協力関係を深めている。ヴェトナムは西沙諸島を巡って目下中国と強い対立関係にあり、インドとの同盟関係は中國への強い牽制になるというわけだ。

いまのところ、中国のインド洋への進出は主に経済的な動機に基づくものと考えられるが、それが軍事的な色彩を帯びるようになると、この地域にまたひとつ大きな紛争が持ち上がりかねない。





HOME次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2013
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである